もつ鍋を食べる(日記)

この日のために夕食を抜いてきたんだ━━━━

 

風呂から上がり、窓をがらりと大きく開ける。
初夏の涼しい風が吹き込み、
ほてった足元を冷やす。
(1階じゃないからGは入ってこないと思いたい)

 

さっきまで1時間硬いフローリングの床の上に体を横たえていたが、
もう気分はおうちでビアガーデンよ。 

世はコロナ禍の下の大禁酒時代、
人々はひとつなぎの大酒宝を求めたとか
酒が自由に飲める最果ての地カクテルだかラフテルだかを目指したと
言ったり言わなかったり(言わないんだよなあ)してるけども、

 

私、これから優勝します。

 

風呂上がりの汗ばんだ四肢を
自室に招き入れた夜風にさらしながら、
最近自室に招き入れてるのは
夜風か埃くらいしかないんだけど、
博多からもつ鍋より前に届いた
太宰府のパンフにぼんやり目をやり、
太宰府」の文字色がM100じゃないな、
M80C10かな、いやY10M80C10くらいかな、と思ってみたり、
梅の花が赤、紫、青、黄色ときて
あれ緑がねぇな、これじゃしんすけ加入だなと思ってみたりして、
私を構成する三大要素が労働、ナポリ、睡眠であることを自覚し、
塩のUndertaleの続きを再生する。




あれっ、塩だね。




ごめん、盛ったわ。全然塩も見るし亀戸の生配信も見るわ。
シュシュさんは酸素なので勘定に入れてないです。

 

青々と鍋の上に生い茂り散らかしたニラと、
モツの脂の混ざり合う匂いが胃を呼び覚ます。

 

━━━━食欲の時間だ。



死んでいた私の食欲が生命の灯を再び大きく燃やす。

 

瞬間 🔚の脳裏に溢れ出した「存在しない記憶」

━━ずっと昔からモツ鍋が食べたかった━━
※存在しない記憶

 

目を閉じれば億千の星、
一番光るお前(モツ鍋)がいる。
初めて一途になれたよ、
夜空へ響け愛のうた。
夜空に響かしときゃいいんだよ、
歌う相手いないし…。

 

にんにくの風味、ニラの味をモツの厚い脂で覆った罪の味を
少し苦いビールで、喉の奥へとそそぎ落とすことの甘美さよ。
もうね、人が生を受けた時と同じ祝福の鐘の音が聴こえるね。

 

私は井の頭五郎みたいに食を雄弁に独りごちることはできないし、
うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」とか吹かせないけど
というか少食の私が吹かしてもせいぜい流行りの
小型四輪駆動みたいにPUIPUIするのが関の山だけど

しゅわっと音を立ててビールを注ぎ足し
満腹の胃にダメ押しとばかりに流し込めば、
さあ、もう優勝者のヒーローインタビューの時間ですね。

 

Q.この感動をまず誰に伝えたいですか。
ーーーーA.博多の両親に(行ったことない)(近畿出身)

Q.勝因はなんだと思いますか。
ーーーーA.いつもの練習通りやれたのが大きかったです。 

Q.最後にカメラに一言お願いします。
ーーーーA.これからも応援よろしくお願いします。

 

ごめんね食欲、
そんなつもりはなかったんだよ。
愛してるから殴ったみたいなところはあるけど、
愛情表現だし、私の食欲なら耐えてくれると思ったんだよ。
1週間晩ご飯が飲むヨーグルトだったのは
ただ単に夕食の時間を勉強時間に充てたかっただけなんだ。
本当は大好きだよ。ゆるして。

 

ビールとモツスープの幸福にたゆたう
クラゲの心地になった私は
鍋の余韻に浸りながらあまおう酒を用意し、
シュシュさんの配信をつけるのであった
(酸素だからね)